2024上期


(ヒビ)の二指癒ゆ暇(いとま)なし忙(せわ)し右(め)


低き陽に眩しき書面障子閉ず


沓脱に朽葉一片旅了(お)はる


冬うらら射し込む陽ざし奥の間へ


年を越す玻璃の拭き跡透きつ照る


梅一輪孤立集落残る朝


防寒帽深く星空大三角


岩牡蛎や抉る刃先は容赦なし


去年の訃を伝ふ寒中見舞いかな


制服の試着大きめ春休み


落第の肩に温き手母の声


黒土や腕(かいな)に重し春大根


公魚(わかさぎ)や小さき命を伝ふ糸


草餅や摘めど胡麻和え疎開児は


ヴィオロンの燦めく音色春の海


海光に白き腕(かいな)や春を弾く


遍路笠「咳をしても独り」碑を過ぎぬ


朧おぼろ大極殿の柱列址


(ひこばえ)や銀杏(いちょう)の形おのずから


久闊(きゅうかつ)や咄嗟(とっさ)に出ぬ名潮干狩


受験子の母と静かに笑むキュート


老鶯や旧友前後に山路行く


百キロを百度押す脚夏に期す


隧道に遙かな白光闇涼し


枝垂れて流れの上に枇杷たわわ


炙らるる真烏賊串刺し濱真昼


日の出待ち露天の長湯海猫(ゴメ)の声


葛餅を夫婦で分ける知足かな


軒叩く夜立ちに目覚む妻は旅


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