2023下期



蚊を打つて滲む掌の血に己見つ


通り庭は涼風のみち母の声


白く反る鱧の落としに京想ふ


宵山や逸れし君と遭ふ露店


蛇籠編む薄切り蓮根豆巻きて


玉の汗滲むにまかせ富士素描


天炎えて湖面の逆さ富士歪む


柚子味噌に幼時は遙か独りめし


鶴翼の崖に湧く滝群れて落つ


そよ風に掃かれ空蝉轢かれけり


掌に沁むは岩の滴り下山道


蒼天や富士に夏雲の群れ廻る


望の月透るフルート遠きより


アプト式赤列車縫ふ秋の渓


動くもの見えぬ牧場や草の花


唐辛子(まんがんじ)炒めて選ぶ白磁皿


走り蕎麦反り嫋やかな笊に和す


秋天へ展く歳月大欅


天高く胸襟ひらく浅間山


滅び愛ず歌碑抱く城趾秋日和


秋澄みて浅間のけむり青に果つ


穂芒や二両連結往く裾野


一夜哭き凩一葉残しけり


寒水や研ぐ包丁の刃に翳り


柚子刻む香りのジャムを贈りたし


邪気蹴上ぐ青き権現散る紅葉


刻まれて大根の真白失せにけり


目や口で笑う蓮根年用意


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