2022下期


己が無知地に出でて悔ゆ蚯蚓かな


紫陽花と犬を撮るひと戦火なく


今や吾に雲取山遠し登山口


盃を置きなぞり登山に地図開く


吾は余生還暦で終ふ鴎外忌


生きものの踏跡辿る蛭の谷


名のみ知る種なし西瓜は終の食に


土黒く蝉の片羽落ちて活く


墓参せぬ息子の拒む墓仕舞ひ


玉の汗絵筆執る手は拭はざり


献杯や樽の香高き新走り


喜寿の妻と秋夕焼けの山下る


父と和す子へ文の筆今朝の秋


けふ満月と妻の呟き松本城


秋麗や米空母基地三駅先


小鳥来る狭庭の日和餌皿吊る


大根引く耕土深きを真つ直ぐに


風呂吹に母の味欲し味噌を練る


発つ前夜可否を説き合ふ台風圏


雨だれのリズム身に沁む夜長かな


葉牡丹やキラキラネーム合ふ意匠


お替りをどうぞに応ふ栗の飯


焼芋も二人でひとつ分かつ日々


尾花照る継ぐ人探す会いくつ


訃報みな葬儀終へりと銀杏散る


散る紅葉黙す二人に鹿威し


冬の庭に時留まりて五十年


一乗寺消え下り松色変へず


盲ひ女の夜咄小声炉火赤し


絵筆追ひ凍てつく水絵上高地


俳句インデックスに戻る