2021上期

 
強羅環翠楼
屏風旧る昭和の行幸遠くなり


頬に寄す半跏弥勒の指の冷え


徒歩のほか術なき秘湯牡丹鍋


ビル峡間黒富士小さき寒夕焼

小惑星探査機
技冴えて星屑届く旅の果て

清一朗
振り返り受験子母ににつと歯を


難関に挑む子の眼や冴え返る


芋を焼くひもじき時代遥かなり


描き初め会参加は二人疫盛る


四分の一需む白菜妻老いぬ



扁額の宸筆雄渾梅日和


朧夜や八坂の塔に心柱


清一朗栄光合格
絵馬たわわ合格御礼に春日さす


草の餅志士に縁の茅茶室


狛犬も吽形緩む枝垂れ梅


大蛤電子の魔術ぽんと開け


滑らかな飛沫二十歳の春の水

清一朗
マスクして小声で唄ふ卒業歌


晴れ着映ゆ新入生の不安顔


(て)に土の感触甲に春日影


春霖や毀つ思案の古倉庫


秘むいのち舗装の隙間下萌ゆる


伽藍への石段高し汗の粒


鯖締めて今宵男厨意気盛ん


積みし時間
(とき)支ふ山門苔茂る

コロナワクチン
繋がらぬ電話競へり迎へ梅雨


抗はず閉ざす生業閑古鳥


転げ行く青梅の先見てをりぬ


紫陽花や色変へ行きし老いの果て


行水を説く盥また絵解きにて


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