2020上期
富士暮れぬペダル漕ぎゆく北風の坂
しなやかに綯ふ故老の手飾り藁
松飾る術後の数値変化なく
泣き虫の五歳の拳初喧嘩
子も参じ五十肩いふ初詣
雪に証三種過ぎたる森の朝
ともに朝餉餌付けの栗鼠に風花す
反射光氷柱(つらら)の列は三尺余
旅果てに疫に囚はる春の船
旬の彩春菜採れたて室戸岬(むろと)より
うつ伏せの落椿みな紅きまま
年ごとに奉仕女老いぬ桜茶屋
菜の花の天麩羅軽し妻と酌む
一筋の木洩れ陽のもと蟇交む
はくれんの挙って散りぬ啄木忌
囀りや実時の墓海光に
疫熄まず生計(たずき)奪はる春の闇
此の期にて就職(ないてい)取消し春の雹
蟄居指示守りて恋し桜餅
蜥蜴去る穢れなき肌しなやかに
狂ひ咲きの一輪残す剪枝かな
柏餅幼なの延べし掌に余り
満載の巨船消えゆき青葉潮
高潮痕礫土に直ぐと美人草
篭の中触れ合ふ夏蕪陽に和む
浅葱色蔕に覗かせ茄子の紺
老鶯の競ふ巧拙声若し
絵筆(ふで)遅し動く軽鴨水脈残す
倒木に天指す小枝若芽噴く
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