真青句集

2018下期


手花火や不惑迎へし末娘

鱧買ひし妻の高声戸口から

すつと割く目の蒼き鯵研ぎ上げて

鮎盛ん魚道を登りダムを超ゆ

シジフォスの苦役思ひつ芝を刈る

短か夜や仄か紅挿し火星寄す

雪渓や妻の足取り幼なめき

放水煙濃き虹生れて渓深む

殉難多々語り部の汗絵図に染む

サッカーの子らは塩飴日の盛り

蚊を打つや吸はれし命まざまざと

訪ふは風空蝉ひとつ門口に

潮も風も二百十日の埒を超え

孫ら去る代はり鳴き初む法師蝉

空き家旧り秋海棠に季は巡る

墓仕舞ひ思案のけふは墓洗ふ

喪のかたち遺言に記さぬ愁思かな

点す灯や田毎の月の里更けて

火祭りの闇に火の粉や二人して

ふる里に未知の史趾あり神無月

角屋
刀傷深き柱や紅葉の朱

対馬二句
巨石墓の三十五代や夜半の月

楢の実の跳ねる石屋根島昏るる

妻の独唱
(ソロ)一族集ふ文化の日

難波宮址
博士像の見守る宮址暮れ早し

銀杏散る風と光に戯れつ

暮れ残る宿の白壁吊し柿

山家暮れ炉辺で焼き呉る五平餅

冬山や地蔵堂より描く宿場

峠越ゆ眼下一面草紅葉