2016下期

鬩ぎ合ふ揺れと縄目や鉾動く

裃に笠の鉾供奉土用照り

頭数揃へど不安夏狂言

英国の悔いこそ前車梅雨の穴

ふざけつつ片蔭拾ふランドセル

先を越す子らの登頂雲の峰

麦藁帽に若やぐ妻や森の朝

雅子妃もここで珈琲ヒュッテも秋

霧晴れて美ヶ原拡張す

嬌声去りパセリの残る皿三つ

前菜はサフラン包みシェフ若し

綿帽子裾曳くドレスへ初紅葉

秋澄みて医院に入るや木の香り

震生湖
青みどろ大正の地震
(なゐ)語る岸

金封に五福と墨書菊日和

百済観音
秋気掌に水瓶抓む指細し

如意輪観音
頬に指仄かな笑みの秋思かな

合歓は実に金婚に寄す孫の文

冷気衝きひびく警策永平寺

葬予告す米寿の自伝酔芙蓉

煮しめ芋記憶遥かにけふの膳

老いの坂下りて故郷へ蔦紅葉

手すさび展咳く爺の巨き壺

七五三裾から覗く赤い靴

真如堂
夕紅葉寝釈迦の潜む石の列

浮かび出づ大島近し霧の海

草書なる実朝の歌碑風花す

坂の上のわが家に懸かる冬オリオン

空つ風終の一葉揺れ震ふ

店閉ずと銘酒振る舞ふ足袋白し


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